<Back   TOP


 


対中政策としてのTPP参加


わが国のTPP参加をめぐる議論において、
しばしばそれが「対中政策」であると語られることがある。

急成長を続けた中国いまやGDP世界2位の経済大国であり、同時に
外交面において一筋縄ではいかない軍事・政治大国でもある。

わが国のTPP参加には大雑把に次の2つの機能が期待されていると考えられる。
(1)中国も参加する場合、
TPPという多国間の枠組みによって(主に米国を巻き込むことで)
一対一の日中間での交渉ではおそらく困難な
市場開放およびルールの遵守を迫ることができるという期待
(2)中国が参加しない場合、
周辺国を非中国的ルールで固めることで対中包囲網、中国封じ込め

とはいえ、このような意図は悲壮感あふれる儚いもののようにも感じられる。
現時点で中国はTPPについては様子見をし
ており、
米国には独自の情報提供を求めており、
自らに有利な条件を注意深く値踏みしている。

例えば日本のTPP参加後、米中で個別FTAとなったら、
ニクソンショック以上の衝撃となるかなあ。


中国とのFTA競争


TPP参加議論以前から、日本と中国はASEAN諸国をはじめ
世界にFTA(自由貿易協定)の網を構築しはじめていた。
自らの経済圏の構築をめぐり、一種の競争をしていた状態にあった。
(中国FTAはローレベルなものという指摘もある)
最近では中韓FTAの可能性が話題となっている。

TPP議論については、こうした中国との外交競争の焦りも重要な文脈である。
中国市場へのアクセスをめぐるASEAN(現地法人企業含む)
との
競争という側面もあったかもしれない(不勉強です)。

なお、わが国製造業企業についていえば、
中国とFTAを結んでいたタイをはじめとするASEAN諸国を経由して
非関税(たぶん)で製品を「輸出」、中国市場にアクセスをはじめていた。


米中と東・東南アジア秩序

わが国の尖閣諸島問題(公式には領土問題は存在せず)と同様、
中国は東南アジア諸国ともそれぞれ領土問題を抱え、
時に威圧的な軍事・外交政策を展開している。

これに対し、米国は
1)大国の一つとして国際秩序の安定に貢献する責任ある役割を期待
2)米国も関与する形で東南アジア諸国の「横のつながり」で中国に対応
という枠組みで対応を図っているが、いずれも肩すかしを食らわされている。
中国は
1)については、「まだまだ小国っすよ」という態度をとり、
2)については「現地のことだから他所は口出さないでくれませんかね。
一対一で話し合いますから」と、米国との切り離しを図っている。

まさに合従連衡を地でいく情勢といえる


この構図を単純に適応すれば、
中国にとっては日本はTPPという合従に参加せず、
単独で中国と連衡し経済交渉ないし対峙をしてくれるたほうが
はるかに与し易いということがいえそうである。
(本当にそういえるかどうかわかりませんが)

米国にとってもTPPは中国を多国間交渉の枠組みに引き入れられるかどうか、
の試金石という意味をもっているのかもしれない


<Back   TOP

▽コメント・ご意見、よろしくお願いします!

 

Tweet


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切かかわりがありません。

inserted by FC2 system